第3回女性による女性のための相談会の報告
女性による女性のための相談会実行委員会
新型コロナウイルス感染拡大防止のために事業所が営業自粛や閉鎖に追い込まれる中、生活困窮する女性が増えています。2020年末から21年年始にかけて、都内各所では相談会が実施されました。そのうち、新宿・大久保公園の「年越し支援・コロナ被害相談村」には、344人が相談に訪れましたが、女性はおよそ2割でした。2008年末のリーマンショック後に行われた年越し派遣村では、505人の相談者のうち女性がわずか5人だったことと比較すると、女性の生活困窮者は明らかに急増しました。
コロナ被害相談村に訪れた女性からは、「セーター1枚をほしかったが、男性支援員には言い出せなかった」、「女性の法律家に相談したい」など、女性ならではのニーズが寄せられました。男性には相談しにくい生活まわりの困りごとや、自分の悩みや不安があっても、家族のことを優先させる女性は、自分のことを後回しにせざるを得ません。
そんな現状を受け、労働組合、市民団体、弁護士などの女性有志が集まり、2021年3月、7月に相談会を開催してきました。
概要
日時 2021年12月25日(土)11:00~17:00(最終受付16:30)
12月26日(日)10:00~16:30(最終受付16:00)
場所 新宿区立大久保公園特設テント(新宿区歌舞伎町)
主催 女性による女性のための相談会実行委員会
後援 東京都/第二東京弁護士会/日本労働弁護団/日本労働弁護団女性労働プロジェクトチーム
相談件数など
相談件数 12月25日84件、26日88件 計172件
キッズルーム利用 12月25日3件、26日5件 計8件
実行委員会スタッフと当日ボランティア 12月25日97人、26日91人 のべ188人
傾向
・相談者の年齢層は、10代~80代まで幅広い。とくに、働き盛りで子どもや親の世話の中心を担う世代の方が多かった。
・防寒着のニーズが高い。会場に来る相談者の多くは、ブラウスにウインドブレイカーなど薄手のものを重ね着している。コートを求める人が10人以上いた。その場で着て、サイズが合えばそのまま着て帰った。
・「包丁がない」、「ガス、電気が止められている」など、調理ができない環境の方がいた。
・大人用紙おむつや尿取りパッドの寄付があり、それを必要としている人がいた。「行政は生理ナプキン無料配布に動くなどしているが、トイレは毎日の問題なので、そこの重要性も気づいてほしい」と要望があった。
・ほとんどの相談者が手袋をしていない。手があかぎれしていて、アルコール消毒が「しみる」と嫌がる。検温をしても体温数値が低く出る。日ごろ低体温になっているのではないか。
・非正規雇用でシフトが減って収入が激減した人が多い。生活レベルがギリギリで、これ以上、どうすればいいのかという声が多かった。
・複合的な悩みを抱えている女性が多く相談に来ている。生活困窮、仕事がない、住まいがない、携帯電話もない、人間関係もない。一人であらゆる問題を抱えて、こじれにこじれてきた。女性が抱える問題が社会から置き去りにされてきたからで、問題が解決せぬまま、行く先々で新たに問題が起きている。国がこの問題にしっかり取り組まないとさらに深刻になる可能性がある。
・行政は女性の問題を長年放置していたが、コロナ禍で女性不況と言われるようになり、やっと女性の困ったという声が届くようになった。もっと深刻な状況が表面化するかもしれない。
・女性の人権がずっとおろそかにされてきた。女は我慢しろ、耐えればいいとないがしろにされてきた。女は「文句を言ってはいけない」「ものを言うな」ということを内面化させられてきた。雇用にしても、非正規で低賃金であり、コロナ切りされても、女性は食い下がって抵抗することを学んでいない。
・今回3回目を迎えて、「女性による女性のための相談会」が信頼を得るようになり、相談者が心を開いて話せるようになってきたのか、より深刻な内容が噴出してきている。今後この相談会が恒常的に実施されるなら、もっと深刻な問題、状況が現れるかもしれない。
相談事例
・勤めていた会社が突然倒産した。退職者に退職金として数万円が支給されただけ。失業保険を受けているがもうすぐ期限がくる。再就職のため職業訓練を受けている。子どもがいる世帯だけでなく非課税世帯にも10万円給付があるという情報をもらったが、自分は知らなかった。
・マイナンバーを登録しないと派遣会社へ登録できない。地元にいる家族と不仲で、マイナンバーカードを作れず、働きたいが働けない。
・夫が病気で失職、在宅で機嫌が悪い。家のことをせず賭け事で金を使ってしまう。
・子どもに発達障害があり面倒を見る必要がある。同居している両親は協力してくれない。自分だけに負担があって辛い。
・生活保護申請に行ったが受け付けてもらえなかった。地方にある実家からは「帰ってくるな」と言われていて、帰れない。
・バイトをしていたが、そこが悪徳企業で続けられなかった(トイレ時間拘束など)。収入が途絶えてしまい困っている。
・自営業だがコロナで休業を余儀なくされた。休業給付金の支給を希望しているが、「条件を満たしていない、支給できない」と行政に言われた。要件を確認したい。
・30代 食料がない。ゲストハウスに住んでいる。数年前に大卒で正社員だったがクビになった。コンビニ等のアルバイトで食いつないでいたが、時給が安く、生活が成り立たない。着る服もなく、物資がほしい。正社員を1年以上続けないと求職者支援制度を受けられないと思っていた。生活保護は受けたいが、受けられるかわからず不安で申請に行っていなかった。
・40代 派遣社員。最近、再就職が決まり、上司のパワハラがすごくて辞めたい。失業保険を使えないか、制度利用の復活がないかを聞きに来た。一度就職すると個別援助ができないかを聞きに来た。他の支援制度が使いにくい。「住宅確保給付金」については、大家のハンコが必要であるため、失業状況で家賃が払えないと思われて、契約が更新されない不安がある。さまざまな制度を使おうとしたが使えない。支援金は条件が厳しいため受給資格があるかわからない。半年前まで働いているので、支援が得られないかもしれないと不安。
・フリーランス。海外からの顧客向けの仕事がコロナで失った。個人事業主の休業補償、月次支援金がもらえるが、10月で制度が終わった。何が活用できるか情報がなくてわからない。子育てしながらの就職活動が難しい。新規支援制度があるかが知りたくて相談に来た。
・40代 高校生の息子が育てにくい。自分も持病があり常用雇用が難しい。生活が厳しいが、生活保護受給はハードルが高い。
・30代 ネットカフェ、ゲストハウスに居住。無職。3年前はコールセンターの日雇いをしていたが、会社都合で打ち切りに。仕事がほしい。マルシェ希望。新宿、池袋の炊き出しは男性が多くて行きづらくて、本日ここに来た。
・30代 子どもの体が弱い。自身も障害者で、子どもの面倒をみるため働けない。