参議院議員会館で、3月相談会の報告と政策提言の集会を開催しました。各政党に私たちの政策提言をお渡ししました。
各党女性局長・ジェンダー平等担当宛て
2021年6月4日
女性による女性のための相談会実行委員会
女性に対する政策に関する要望
私たちは去る3月13日14日に新宿区の大久保公園において女性よる女性のための相談会を行いました。大雨や強風の状況ではありましたが、120例を超える相談を受けました。そこからコロナ禍で一層深まっている女性の困難な状況を改善するための要望を取りまとめましたので、女性政策への反映を要望いたします。
1.大規模な全国調査の実施を
政策の前提として、コロナ禍における女性の生活、労働、貧困状態、家庭内のDV
・虐待状況、自殺対策についての大規模な全国調査を早急に行ってほしい。
参考:
①1800人を対象にしたシングルマザー調査プロジェクト https://note.com/single_mama_pj/n/n213a01adecde
②「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも電話相談会」の相談内容を「貧困研究会」が分析。
「2020年2月と比較してどれほどの収入減か」という質問に、20年8月で自営業主が平均でマイナス11万4000円。派遣社員が平均でマイナス9万2000円。フリーランスが平均でマイナス6万円。20年12月には、フリーランスが平均でマイナス12万1000円、自営業主が平均でマイナス8万3000円、派遣社員が平均でマイナス8万3000円。
2.住まいについて
・シェアハウス問題:年収200万円以下の20代女性が多いが、劣悪な貧困ビジネス的なシェアハウスも多い。賃貸借契約ではなく、滞納1カ月で追い出し、退去時に10万円の支払いを強要などがある。
・コロナ禍の間だけでも家賃を滞納しても追い出さない制度が必要。
・住宅確保給付金の拡充:給付金は都内の平均家賃には十分でない。期限や条件を限定しないこと。
・コロナの影響で減収したのに、その証明ができない人は制度から漏れることが問題化している。
・住まいを失った人に対して、公営住宅等の空き住戸への優先的入居制度または民間住宅の家賃補助。
3.雇用について
・ 非正規への休業助成金や国民健康保険の傷病手当の恒常化を
これまで「家計補助」として公的セーフティネットの外に置かれがちだった非正規の窮状が今回のコロナ禍で表面化したが、女性の大量の雇用喪失は、こうした仕組みの不備が原因だった。また、労組などの加入率が極めて低い短期契約の女性たちにとって、シフト労働者などが個人で申請できる休業支援金・助成金もその存在を6割が知らず、「家計補助」扱いをされ続けてきたため、知っていても8割以上が「自分が該当するかどうかわからなかった」として申請していなかった(2020年12月野村総研調べ)。
そうした女性たちの緊急支援として、一律の特別定額給付金は有効である。シングルマザーの受給度も他の支援より特別定額給付金は高い。その場合女性の支援策という趣旨から受給権者は個人とすることが必須である。
・フリーランスにも雇用セーフティネットを
フリーランスは自営業扱いとされ、当初は休業支援金の対象にもならず、当事者たちの粘り強い働きかけでようやく半額だけ支給となった。また国保の傷病手当も、被雇用だけが対象になったが、フリーランスは対象外である。
フリーランスは自営と被雇用の非正規の中間的な性格を持ち、それに沿った新しい雇用セーフティネットが必要。独禁法による救済を基本とする新ガイドラインは、マイナスになりかねない部分もあり、当事者の労組や労働弁護団の意見を聞いて労働実態に即した改定を急ぐ必要がある。国保にフリーランスも含めて利用できるような傷病手当を恒常的に新設する必要がある。
・非正規公務員、職務実態に沿った制度の見直しを
2020年度から始まった「会計年度任用職員」制度は、1年有期の非正規公務員を合法化した。この8割近くは女性であり、コロナ禍で学童保育や保育、相談業務などエッセンシャルワーカーとして感染リスクを冒して一線を支えた女性職員たちが年度末に雇い止めに遭うというダブルショックをもたらした。恒常的な職務は常勤に、という地方公務員法の原則に立ち返り、恒常的に必要な職務の実態に沿った制度に見直す必要がある。
また、特別職から一般職の会計年度職員に移されたため、労働3権の保障から外される事態も起きており、こうした職員に対する人事院による待遇保障を強化するか、または労働3権の保障を復活するか、何らかの措置が必要になっている。
・ 就職活動必需品が準備できない問題
「女性による女性のための相談会」では、再就職活動のための衣料品として、積まれた支援品から白いブラウスを持っていく相談者が多かった。このような必需品が就職支援には必要だ。
履歴書はパソコンで打たれたものでないと受け付けない会社も多いが、ハローワークによってパソコンの有無にばらつきあり、就職相談員からも設置を求める声が聞かれる。すべてのハローワークにこうした女性たちが使えるパソコンを設置してほしい。
・就職支援では、女性が働きたいと思うような職種の選択肢が少ない
再就職先として介護やITが提示されているが、介護は「男性のケア」を求められることからDVや性暴力被害、親からの虐待に遭った女性などにとって必ずしも適切な就職先とはいえないことがある。ITも長時間労働にならない枠組みのものを用意する必要があり、女性たちのニーズを調査の上、多角的な就労先を用意することが必要である。
4.社会保障と税
・持続化給付金などコロナ渦での各種給付金や助成金が収入と見なされるため、所得税や住民税等のほか、国民健康保険料や各種社会保険料等も増額されてしまう問題が発生している。
・同様の問題として以下の問題点もあげられるー
・就学支援金が受けられなくなる
・給付金が収入として換算されるため、児童扶養手当がもらえなくなる
※コロナ前年の年収が一定基準以上だったために、コロナによって収入が激減していても、児童扶養手当が廃止や停止されるなどの問題が発生している
※児童扶養手当は、DV被害者の場合、離婚成立又は保護命令発令でないと受給資格を得られない。いちばん支出の多い別居直後にその役割が果たされておらず、1年ごとの受給更新において人権侵害ともとれる質問項目(「交際相手がいる」「週に何回会っているか」など)が含まれている。これは、児童扶養手当受給資格との関連性がない。その他、更新書類の手続きに困難を抱える女性が多く、コロナ年末特別給付が受けられない母子からの相談は多かった。
5.携帯電話の必要性
・生活困窮している女性やDV被害者、親の虐待を受けた女性が携帯電話を契約できない問題。※銀行口座も同様である。
携帯電話の契約には身分証明書が必要であり、住民票を移せず、身分証明がないDV・虐待被害者等は携帯電話の新規契約ができない。古い身分証明書での契約は、自宅に契約書類が送付されてしまうため、居場所が突き止められてしまう危険性がある。東京都が児童扶養手当受給者に対し、JR定期券の割引手続きに使用する「写真付き資格証明書」を自治体が発行し各種証明書と同様に扱うことを検討してほしい。
・生活困窮時だけでも、行政から携帯を貸し出すような支援が必要とされる。
SOSを出す人の半分以上が携帯が止まっているか近々止まる状態で、身分証明書を持っていても、携帯料金の未払いによって他社でも新規の携帯電話契約ができないことが多い。現在では携帯電話がなければ就労ができず不動産契約もできないので、社会的IDともなっている携帯電話は自立生活のための必需品である。携帯を止められている人に対しては、行政から貸し出すような支援を提供して欲しい。
6.給付金
・世帯主ではなく、個人に給付するような制度が必要
複雑な手続きがなくても給付されることを望む。コロナ特別定額給付金を受け取れていない方のために、遡及申請を受け付けてほしい。
7.妊娠・中絶
・生活困窮の状態で妊娠した女性が中絶を望む場合に支援金を支給すること
妊娠中絶の費用が捻出できないために、ゼロ日殺害と言われる出産後遺棄が続いている。妊娠届を出さなくても中絶費用だけでなく、母体回復期間の生活支援金あるいは補助がなされるよう望む。
8.外国人女性
家事支援人材の業界で複数の女性たちの雇い止めが発生するなど、外国人女性への支援策が手薄なままで進められてきた外国人女性労働力の導入によって路頭に迷った女性たちが相談会にも来ている。外国人実習生の妊娠問題も深刻化しており、短期の生活費・住居・再就職先などの緊急支援と同時に、在留資格と労働権を折り合わせる多角的な施策が必要である。
以上